読めばホワイト企業度アップ!毎月注目の人事労務関連記事【法改正】【SHEM人事労務クイズ】【厚労省の最新情報】など、各種取り揃えてお届けします。
Contents
1.【厚労省の最新情報】厚労省がモデル就業規則を改訂 退職金の支給の規定を見直し
2.【政府の最新情報】新しい資本主義の加速に向けて―「少子化対策・こども政策の抜本強化」(骨太の方針2023)
3.【SHEM人事労務クイズ】タメになる、「SHEM人事労務クイズ」
厚労省がモデル就業規則を改訂 退職金の支給の規定を見直し
厚生労働省では、各事業場の就業規則の参考になるように、規定例や解説をまとめた「モデル就業規則」を公表していますが、この度、令和5年(2023年)7月版が公表されました。
今回の主な改訂事項は、退職金の支給の規定の見直しです。
□モデル就業規則「退職金の支給」の改訂箇所の要点(改訂後の第54条第1項)
【改訂前】 勤続○年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続○年未満の者には退職金を支給しない。また、懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
【改訂後】 労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
※政府の「骨太の方針2023」では、成長分野への労働移動の円滑化を図る施策の一環として、「自己都合退職の場合の退職金の減額といった労働慣行の見直しに向けた「モデル就業規則」の改正や退職所得課税制度の見直しを行う」といった方針が示されており、今回の改訂はそれを受けてのものと考えられます。
☆あくまでも“モデル”なので、自社の就業規則をそのとおりに改訂しなければならないわけではありませんが、厚生労働省の考え方を示すものとして、特段の事情がない限りは参考にすべきでしょう。
新しい資本主義の加速に向けて―「少子化対策・こども政策の抜本強化」(骨太の方針2023)
政府の「骨太の方針2023」などで、「新しい資本主義の加速」の柱の一つとして、「少子化対策・こども政策の抜本強化」が掲げられています。
今回はそのポイントを確認しておきましょう。
<少子化対策・こども政策の抜本強化>
□加速化プランの推進
○こども・子育て政策の抜本強化により少子化トレンドを反転させる
○こども未来戦略方針に基づき、国民に実質的な追加負担を求めることなく、加速化プランを推進
<加速化プラン(今後3年間の集中的な取組)のポイント>
●若い世代の所得を増やすため
・児童手当について、所得制限を撤廃するとともに、高校生の年代まで支給期間を3年間延長し、第3子以降は3万円に倍増する。これらは来年10月分から実施予定。
・「106万円、130万円の壁」による就労制限は、長く指摘されてきた課題。共働き世帯を支援するため、「106万円の壁」を超しても手取り収入が逆転しないよう、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージを本年中に決定し、実行に移す。
・週20時間未満のパートの方々に雇用保険の適用を拡大し、育児休業給付が受け取れるようにする。
●社会全体の構造や意識を変えるため
・職場が思い切って変わっていくように育休取得率目標を大幅に引き上げて、2030年には85%の男性が育休を取得することを目標とする。
・具体的には、時短勤務やテレワークなど多様な働き方を選べる環境を整備して、子供と過ごせる時間をつくれるようにするとともに、育児期間中に完全に休業した場合だけでなく、時短勤務を選んだ場合にも給付(「育児時短就業給付(仮称)」)をもらえるようにする。
・また、産後の一定期間に男女で育休を取得した場合の育児休業給付の給付率を、手取り10割相当に引き上げる。
□こども大綱の取りまとめ
○縦割りを超え、教育や住宅など多様な施策とこども政策を連携 など
タメになる、「SHEM人事労務クイズ~今月号の問題~」
毎号「法律は知っているけど、実務ではどう対処すればいい?」「論点が細かいと調べても答えがわからない」「自己流で対応したけど不安…」といったお困りに「ちょっとタメになる」解決のヒントを提供する、人事労務クイズのコーナー。
今回は次のような質問です。
Q 副業・兼業を許可したとして、労働時間の通算によって割増賃金が必要になるケースがあるということは、時間外・休日労働(36)協定の時間数も通算する必要があるのでしょうか。時間関係は自己申告によらざるを得ませんが、どのように考えればいいのでしょうか。
タメになる、「SHEM人事労務クイズ~前号(2023年8月号)の解説~」
前号Qの気になる解説はこちらです(ぜひバックナンバーをご覧ください)。
2023年8月の回答(前号分)
A 休日労働をさせるには、まず時間外・休日労働に関する労使協定(いわゆる「36協定」)を締結し届出をする必要があります(労基法36条)。これにより労基法上の免罰効果を得られますが、個々の労働者へ労働義務を発生させるには、就業規則などに時間外・休日労働命令の規定を設けて周知することにより、命令権を取得しておくことが求められます。
次に年次有給休暇について、基本は、雇入れから6カ月間継続勤務し全労働日の8割出勤した労働者へ10労働日付与するとしています。以後1年ごとに、勤続年数に応じた日数を付与します。年休は、賃金の減収を伴うことなくして、所定労働日に休養させるために付与されるものです。労働者の請求する時季に与えることが基本となります(法39条5項)。
しかし、賃金の減収を伴うことなく労働義務の免除を受けるものなので、休日その他労働義務の課せられていない日については、これを取得する余地がないとされています(昭24・12・28基発1456号)。本条が「10労働日」の有給休暇を与えるという文言を使用しているのもかかる立法趣旨からであると解されるとしています(労基法コンメンタール)。
休日労働は、休日という本来労働義務のない日における臨時的な取扱いであり、当初から労働日である日に行われるものではありません。例外的な労働義務であり、休日労働を命じて労働義務を発生させたとしても労働日となるわけではないといえます。また、発生要件にある「全労働日」の算定に当たり、労働日とみるべきか否かに関して、所定休日は、所定休日に労働させた場合を含めて、全労働日に含めないとしています(昭33・2・13基発90号)。休日労働が労働日であることを否定しているといえます。
したがって、年休を請求されても与える必要はないでしょう。なお、休日労働命令については、業務上の必要性と労働者の私生活上の自由のバランスを考慮したうえで、正当かどうか(権利濫用にならないか)を考える必要があるとされています(石嵜憲信「懲戒権行使の法律実務」)。必要性が大きくても、例えば、ほかに対応できる人がいなかったり(非代替性)、その日に対応しないと具体的に損害が生じたり(損害性)するなどの事情がない限り、命令を拒否し従わない事実があっても懲戒処分をすることはできないと考えた方が良いとしています。