SHEM 非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構

ISO45001とは?認証メリットと要求事項3つのポイント

ISO45001とは

ISO45001は、国際的な標準規格を発行する非政府組織「国際標準化機構(ISO)」によって2018年3月に発行された労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。

過去、ISOが発行してきたマネジメントシステムの国際規格には、

などがあり、そのいずれもが大きな話題となりました。現在でもオフィスや工場に「ISO14001取得!」といったような看板を大きく掲げている企業が数多く存在します。
それほど、ISO(国際規格)が企業活動に与える影響は大きいのです。

ISO45001は同じISO規格であるISO9001やISO14001と用語や定義を統一していることから、すでにISOの認証を受けている企業はこれらを統合的なマネジメントシステムとして運用することができます。

ISO45001とOHSAS18001の違いを比較

ISO45001と同じく労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格にOHSAS18001というものがあります。
この2つの規格の違いを比較するには、ISO45001が発行された背景についてご説明する必要があります。

「OHSAS18001」は「ISO45001」の前身的存在

労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格の検討が始まったのは1995年のことです。しかし、当時は「将来的なニーズはあるかもしれないが現時点では不要」という結論に達し、規格の発行は見送られました。

英国規格協会が労働安全衛生マネジメントシステムに関する国内規格であるBS8800を発行してから状況は変わり始め、世界各国での労働安全衛生マネジメントシステムの標準規格を求める声が高まり始めました。
そして、イギリスが中心となって国際的なコンソーシアム(共同事業体)が発足し、1999年に発行されたのがOHSAS18001です。各国でOHSAS18001を基準とした労働安全衛生マネジメントシステムの認証制度が始まりました。OHSAS18001は2007年に改訂版も発行されています。

OHSAS18001の認証取得件数の増加もあいまって、再びISOによる国際規格の発行が求められるようになりました。そして2013年、ISO内に労働安全衛生マネジメントシステムの規格を開発する委員会が設置され、複数回にわたる国際的な会議や投票の結果、承認され規格として発行されたのがISO45001なのです。
このような経緯から、OHSAS18001はISO45001が生まれるきっかけとなった前身的な存在と言えます。ISO145001の要求事項には、OHSAS18001からの流れを汲む内容も数多く含まれています。

 

ISO45001認証のメリット

ISO45001の認証を取得するメリットは以下の3つです。

  1. 労働安全衛生の管理体制の構築
  2. 労働安全衛生にかかわるコストの削減
  3. 顧客やステークホルダーの信頼性向上

1.労働安全衛生の管理体制の構築

労働安全衛生マネジメントシステムの枠組みを活用することで、今まで分散的・形骸的になっていた内部管理機能を統一的かつ効果的な仕組みに落とし込むことができるようになります。会社の性質に応じた労働安全衛生上の問題や課題を把握しやすくなり、迅速な対処や効果的な対応策・防止策の実施が可能となります。

2.労働安全衛生にかかわるコストの削減

統一化、効率化された労働安全衛生マネジメントシステムを構築することで業務が効率化し、今まで費やしていた人的資源や経済的資源などのコストを削減することが期待できます。その分、本来注力するべき事業に資本を投下することができ、無駄な雑務から解放された従業員の満足度の向上も見込めるでしょう。

3.顧客やステークホルダーの信頼性向上

国際規格であるISOの認証を取得するということは、労働安全衛生の改善を継続的に実現し続ける企業であると世界的なお墨付きを得ていることを証明するものです。当然、ただ「私たちは職場の労働安全衛生に関する仕組みをしっかりと構築しています」と主張するより「労働安全衛生に関する国際規格の認証を取得しています」と主張した方が信用度は高いでしょう。取引先の選定にISOを取得しているかを判断材料とする企業も多く、ISO45001の取得の有無が業績に影響してくる可能性は十分にあり得ます。

 

ISO45001の要求事項における3つのポイント

ISO45001の認証を受けるために要求される事項は、OHSAS18001などと大きく異なる点はありません。認証に向けた取り組みにおいては以下の3点がポイントとなります。

  1. トップ主導による取り組み
  2. 「働く人」の参加
  3. PDCAサイクルの循環

1.トップ主導による取り組み

労働安全衛生マネジメントシステムは、全社が一体となって取り組むことが求められます。そのため、まず最初に経営者などトップマネジメントにあたる人が主導して方針を打ち出し、明文化し、社内に周知していく必要があります。また要求事項の中には、マネジメントにおける全体責任、説明責任のほか、各種支援や促進、あるいは取り組みの中で働く人が受けうる報復から擁護するなど、トップが自ら実施することを求められる内容も数多く含まれています。

2.「働く人」の参加

ISO45001の要求事項には、

など「働く人」というワードがよく出てきます。これは単なる「労働者」よりも枠組みを広く捉えているためです。労働者の場合、対象となる人は企業に賃金で雇われた被雇用者に限定されます。しかしISOではより広範囲の関係者を労働安全衛生マネジメントシステムで扱うべきだとしているわけです。被雇用者だけではなく、事業者、管理職、請負業者、派遣労働者、ボランティア、インターンシップなど組織の事業活動に関わる「働く人」すべてが安全かつ健康に働ける労働安全衛生マネジメントが求められます。

3.PDCAサイクルの循環

ISO45001では、「労働安全衛生マネジメントシステムの根底にあるアプローチの基礎はPDCAにある」と記されており、PDCAがISO45001の要点であることが分かります。

Plan(計画)では、組織の状況および働く人や利害関係のニーズ・期待を理解し、そのデータを元に労働安全衛生マネジメントシステムをどの範囲に適用するか決定します。また、労働安全に関わるリスクや機会を判断・評価し、組織の労働安全方針に沿った結果を出すために必要な目標やプロセスを確立します。

Do(実行)では、計画どおりに労働安全衛生マネジメントを進めることが求められます。

Check(確認)では、労働安全衛生方針や目標に照らして活動やプロセスを監視・測定し、その結果を報告します。

Act(見直し)では、測定した結果を元により目標に沿った成果を出せるよう改善策を策定し、継続的な改善を図ります。

この4つを常に循環させてより働きやすい職場へと変えていくことが労働安全衛生マネジメントシステムの基礎であり目的となります。

 

ホワイト企業の証「ホワイトマーク」について

今、安全衛生に関わる認定制度であるホワイトマーク(安全衛生優良企業公表制度)が注目されているのをご存じですか?

ISO45001と同様に、安全衛生に対して一定基準以上の取り組みを行う企業や団体を顕彰・公表する制度で、ホワイト企業の証とも言われてます。

認定を受けることで、厚生労働省のサイトに企業名が公表され、ホワイトマークを製品や名刺、広報資料などに使用できるなどのインセンティブもあります。

気になる方は是非チェックしてみてください。

モバイルバージョンを終了