第6回 メンタルトレーニング改革で結果を出したサッカードイツ代表

マイナンバーの次は、ストレスチェック義務化の準備

マイナンバー制度が2015年10月5日施行となり、これまで奔走していた管理部および人事総務部等の担当者も早いところではそろそろ準備ができてきた頃でしょうか。

先日、とあるセミナーでご一緒させていただいたマイナンバー担当の張本人。内閣府大臣補佐官で自民党の福田峰之先生は、それはそれはものすごい勢いでマイナンバー制度の紹介をしていました。しきりに仰っていたのは「世界観」という言葉で、これまで国民に世界観を伝えることが上手くできなかったことから、理解不足に陥っていて申し訳ないというようなことを仰っていました。

また、マイナンバーのリスクとして個人情報が漏れる等の報道がよくされていますが、そんなことはまったく心配することはないと言い「私は、12桁のマイナンバーのTシャツを着て街を歩きます。番号が知れたからといって何のリスクもありませんから……」と言い切っていました。

電子政府先進国といわれるエストニアでは、いわゆるマイナンバーカードを使ってできるサービスが3,000種類もあるそうで、IT先進国でもある同国では、我々が想像もつかない便利なサービスがあるのではないかと思うと、ちょっとワクワクしてきます。
実際の利用は来年1月からとなりますが、運用に期待したいところです。

さて、マイナンバーが落ち着くと、次に迫るのは12月1日施行となる「ストレスチェックの義務化」です。
私が代表を務める別会社の株式会社ユニバーサルステージでは、昨年の夏からストレスチェックのパッケージ商品を提供しています。順調にクライアントが増えて3桁まで獲得できていたのですが、5月以降くらいからマイナンバーの嵐に巻き込まれ少々停滞していました。しかし、ここ最近ストレスチェックの引き合いがしきりに多くなり潮目を感じているところです。

先日、春からクライアントになっている建設業のA社で「安全衛生大会」がありました。全国の支店および協力会社の方々、総勢数百名が参加するところで「ストレスチェックの義務化」について話をして欲しいということで行ってきました。
建設現場では、若い方から外国人までさまざまな労働者がいることとあまり四角四面な法律の話をしても退屈なだけなので、メンタルヘルスを含めた事例を身近な話題を使ってお話しました。その一部をお伝えします。

メンタルトレーニング改革に着手

2006年のFIFAワールドカップの開催地がドイツに決定した頃、ドイツ国内ではなんとか優勝をめざそうという動きが活発になっていました。2004年当時の代表監督は、現役時代からFWとして人気・実力ともに高かったユルゲン・クリンスマンでした。そのクリンスマン監督がある日、ハイデルベルク大学のスポーツ心理学者だったハンス・ディーター・ハーマンをコーチとして招聘し、メンタルトレーニングの改革に着手したのです。

それまでも、ドイツ代表はメンタルに強くワールドカップのような大舞台でも好成績を収めてきました。優勝4回、準優勝4回、3位4回という見事な成績。昔からメンタルの強さには定評がありました。
しかし、自国開催でどうしても優勝を手に入れたいという思いから取り入れた一つの戦略が、メンタルトレーニングの改革だったのです。

ドイツ代表のトレーニングは、いわゆるスポーツ選手が日頃行っているフィジカルトレーニング、食事、睡眠の3つをマネジメントしていく一般的なものでした。しかし、昨今では、そのマネジメントにドイツのIT企業「SAP」が加わりさまざまなデータ分析をしています。例えば、一人の選手が一回ボールを触った際に何秒保有しているかを調べました。分析データから練習方法を変化させていき、その結果、保有時間はみるみる減少、球離れのいい、スピーディーなサッカーへと変貌を遂げていったのです。そして、フィジカル、食事、睡眠に加え、メンタルのトレーニングを加え総合的にマネジメントしていくというスキームの大改革に乗り出しました。

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クローゼのスキャンダル(よくない噂)

ここで、ドイツの国民的スーパースターであるミロスラフ・クローゼのエピソードをひとつお伝えしたいと思います。
クローゼは、ある事実無根のスキャンダルに悩まされていました。大衆紙に「妻がチームメートと不倫関係にあり、妊娠した」という記事をでっち上げられたからです。完全なでっち上げなのですが、クローゼはプレーに集中することができなくなりスランプに陥ってしまいました。

そんなクローゼの悩みを知ったコーチのハーマンはアドバイスをしました。「どうしても気になってしまう思考があったら、一度、頭の一部にパーキング(駐車)しなさい。それについては後で考えればいい。パーキングすれば、他のことに集中できるようになる」

パーキング(駐車)の活用

「ミスは頭のなかにパーキング(駐車)しておいて、目の前のプレーに集中しよう。反省や修正は、試合が終わった後に好きなだけやればいい」

クローゼは、これを実践して少しずつ調子を取り戻し、2005-06シーズンにドイツリーグの得点王に輝きました。更に2006年ワールドカップでは、5点を決めて大会の得点王に。後にクローゼは「メンタルトレーナーのおかげで試合に集中できるようになった」と感謝の言葉を贈っています。

パーキングの技術は仕事にも有効

「パーキング」の技術は、仕事場にも応用できるのではないでしょうか。上司に何か言われて腹が立ったとしても、専用の駐車場にしまっておけば、感情をコントロールできます。仕事のミスが頭から離れない時も、駐車場に押し込んでしまえばいい。
今回のA社のように建設現場など、危険と隣り合わせの職業では、集中しないと事故(労災)につながってしまいます。
話はクローゼに戻りますが、その後2014年FIFAワールドカップにドイツ代表選手として4度目の出場を果たし、2得点を上げFIFAワールドカップの歴代得点王になり、ドイツを優勝へと導きました。
一人の優秀な選手がメンタルに悩み、克服し結果を出したというエピソードです。

私は、これを知ってすぐに実践しました。まだ慣れないせいかパーキングが頭のどこにあったか、それを探すのに少々戸惑うのですが、いったんパーキングに置くと雑念が無くなる気がします。

皆さんもメンタル業界でいうパーキング(駐車)の技術を上手く使って、飛躍的な結果を出せるようやってみてはいかがでしょうか。

引用:一流選手はなぜ”ミス”を引きずらないのか?(東洋経済ONLINE 2013年3月14日掲載)